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貸付限度額の設定はどう行うか

流動資産担保融資保証制度において、貸付限度額はどのようにして設定すればよいのか。

個別保証については売掛債権額に掛目を乗じた額を貸付限度額とする。ただし、未発生債権を返済引当とする場合は、掛目に加えて役務提供の進捗度合い、または2分の1を乗じた額を貸付限度額とする。根保証については、売掛債権および棚卸資産の見積額に掛目を乗じた額を極度額の上限とする。

見積額に掛目を乗じるのが原則
(1)掛目
個別保証の貸付上限額および根保証の極度額の上限を定めるにあたっては、掛目を用いる。本制度では掛目を統一的に定めている。まず売掛債権の掛目は、第三債務者の区分および対抗要件の種別に応じて、70%から100%の範囲内の数値としている。第三債務者の区分とは、①官公庁・上場有配企業、②店頭・新興市場上場有配企業、③一般企業の3区分としており、この順に掛目が下がる。対抗要件の種別とは、①異議なき承諾、②通知・異議を留めた承諾、③登記(通知留保)の3区分としており、この順に掛目が下がる。この組合せにより具体的な掛目が決定されることとなる。次に棚卸資産の掛目は、棚卸資産の種類にかかわらず一律30%としている。なお、棚卸資産について第三者の客観的評価が得られた場合等、金融機関および信用保証協会が相当と認めたときは、70%を上限として
引上げることもできる。

(2)個別保証
個別保証とは、個々の売掛債権を返済引当とし、当該売掛債権の入金日と貸付の弁済期日を同日とすることにより、売掛金を返済原資として単発の手形貸付保証を行うものである。まず、既発生債権(役務の提供が完了しており、代金の請求ができる状態のもの)を返済引当とする場合は、返済引当とする売掛債権の額に掛目を乗じた額が貸付限度額となる。次に未発生債権(役務の提供が完了していないものおよび役務の提供が完了していても納品書等のエビデンスが整っていないもの)を返済引当とする場合は、返済引当とする売掛債権の額に掛目を乗じ、さらに役務提供の進捗度合いまたは2分の1を乗じた額のいずれかが貸付限度額となる。役務提供の進捗度合いとは、役務提供契約の締結日から役務提供完了予定日までの月数を分母とし、役務提供契約の締結日から借入申込日までの月数を分子とするものである。

(3)根保証
根保証とは、売掛債権および棚卸資産の集合体を担保として極度額を設定し、その範囲内で反復継続して行われる貸越に保証するものである。根保証については、前項で述べた売掛債権および棚卸資産の見積額に前述め掛目を乗じた額が極度額の上限となる。

売掛債権や棚卸資産の評価はどう行うか

流動資産担保融資保証制度において、金融機関および信用保証協会が売掛債権および棚卸資産を担保徴求するにあたっては、それらの担保評価をどのように行うのか。

原則として担保評価は行わず、売掛債権については過去1年間の平均月商額に平均サイトを乗じた額、棚卸資産については直近の簿価を基準とする。ただし、季節的要因等により残高に大幅な変動がある場合は過去1年間のピーク残高を基準とすることができる。

原則として担保評価は行わない
(1)売掛債権
売掛債権については額面金額が存在するため、特に評価を行わなくとも金額の把握が可能である。しかし、根保証における貸付上限額を設定するにあたっては、申込人が常にどの程度の売掛債権を保有しているのかを把握する必要がある。本制度では、過去1年間の平均月商額に平均サイトを乗じた額をもって売掛債権の見積額とすることとしている。なお、季節的要因等により月商額に大幅な変動がある場合は、過去1年間のピーク月商額にサイトを乗じた額とすることもできることとしている。これらの平均月商額、平均サイト、ピーク月商額については、申込人が専用書式に記載して金融機関および信用保証協会に申告しなければならない。

(2)棚卸資産
棚卸資産については、様々な物が存在し、必ずしも処分市場が確立されていないことから、客観的に評価額を把握することは困難な状況にある。近年、評価会社がいくつか出現しているものの、その評価を用いる場合は相応のコストが生じることとなり、結果として中小企業者の負担を増やしてしまうこととなる。そこで、本制度では原則として評価会社の評価を用いず、直近の簿価をもって見積額としている。なお、季節的要因等により棚卸資産の残高に大幅な変動がある場合は、過去1年間のピーク残高をもって見積額とすることもできる。

簿価またはピーク残高は、金融機関が決算書その他の資料から金額の妥当性を確認し、専用書式により信用保証協会に提出しなければならない。その専用書式には棚卸資産の種類・保管場所ごとに金額を記載することとなっているが、保管場所ごとの簿価は決算書から把握することが困難であるため、その他の台帳等や申込人からのヒアリング等により確認しなければならない。また、前述のとおり本制度では評価会社の評価を用いないのが原則であるが、評価会社の評価を得ることができ、簿価の信憑性が高まったと認められるときは、掛目を引上げることができる。

流動資産担保融資保証制度の具体例

本制度のもとでは、中小企業者の負担を軽減する観点から、棚卸資産については原則として評価会社の評価を用いず、簿価に一定割合(掛目=30%)を乗じることにより、また売掛債権については第三債務者の信用区分と対抗要件の種別に応じて設定された掛目(70%~100%)を乗じることにより、極度額の上限金額を算出することとしている。

本制度ではモニタリングにより申込人の状況を把握することが重要となる。モニタリングには、①売掛債権および棚卸資産の売却代金の入金状況め確認(月1回以上)、②棚卸資産の数量や売掛債権の我高の報告書の徴求(3ヵ月に1回以上)、③棚卸資産の現物確認(立入調査)(年1回以上)がある。

返済不能となったときは、棚卸資産の処分を検討することとなるが、処分を行うタイミングは、再建型法的整理手続の場合を除き代位弁済前に行うことを原則としている。処分の方法としては、まず申込人が従来から持っている処分ルート(取引先)を活用するのが最も有効な手段となるが、処分を試みても結局費用倒れとなるような場合には、譲渡担保権を行使しない旨の意思表示をすることにより、棚卸資産の所有権を申込人に復帰的に移転させることができることとしている。

流動資産担保融資保証制度とは

流動資産担保融資保証制度とはどのような制度か。

中小企業者の有する棚卸資産および売掛債権を担保とする貸付に信用保証協会の保証を付する制度のことである。不動産担保や保証人に依存することのない新たな手法として動産や売掛債権の担保徴求が注目されており、これを促進することを目的として平成19年8月に創設されたものである。

棚卸資産及び売掛債権を徴求
不動産担保や保証人に依存することなく、動産や売掛債権を担保徴求して行う融資の手法はABLと呼ばれており、借手にとっては資金調達手段が多様化されるうえに、金融機関にとってはモニタリングにより企業の状態を適時に把握することができるというメリットがある。また、動産債権担保が金融検査マニュアル上、一般担保として明確化されたこともあり、利用実績は伸びつつある。

本制度の保証限度額は2億円、貸付形式は当座貸越である。 80%の割合保証となっているため、貸越限度額は2億5,000万円となっている。本制度にいう棚卸資産とは、商品仕入による在庫商品や、製造業における製品在庫等を指し、決算書上固定資産として計上される機械設備や車両運搬具等は含まれていない。担保となる棚卸資産及び売掛債権は、金融機関と信用保証協会の双方に提供されることとなっている。譲渡担保契約書の徴求にあたっては、申込人め概要記録事項証明書(ないこと証明)を徴求し、先行譲渡がないことを確認しなければならない。

市区町村長の認定とはどのようなことか

経営安定関連保証(セーフティネット保証)を利用するにあたり「市区町村長の認定書が必要」と言われたが、認定とはどのようなことか。

経営安定関連保証の利用にあたっては、市区町村長から認定を受けたことのわかる「認定書」が必要である。各認定基準には認定申請期間が経済産業省により指定されており、その指定期間内に認定申請がされなければならない。また、認定書の有効期限は発行日から30日間であり、期限経過後は認定書が失効してしまうので、有効期限内に信用保証協会に保証申込みを行う必要がある。

市区町村の担当窓口で認定手続を経ることが必須

(1)担当窓口
経営安定関連保証の資格要件を具備しているかどうかを審査・認定する認定権者は市区町村長である。対象となる中小企業者は、本店(個人事業主の場合は主たる事務所)所在地の市区町村の担当課(商工担当課等)の窓口に認定申請書(様式は市区町村で配布している)とその事実を証明する疎明資料等があれば添付のうえ提出する。その後、市区町村の担当部署にて、中小企業庁が定める認定基準に合致しているか否かが確認され、認定基準を満たしていると判断された場合には「特定中小企業者」として、認定書が発行される。

(2)各認定基準の指定期間および認定書の有効期限
各認定基準にはそれぞれ指定期間があり、その指定期間内に特定中小企業者の認定申請がなされている必要がある。指定期間経過後の認定申請は受付されないので、認定基準が指定期間内のものかどうかを都度確認する必要がある(1~5号および7号認定に関する指定は官報に告示される。認定基準、指定期間、6号認定に関する破綻金融機関については中小企業庁のホームページからも確認することができる。また、認定書の有効期間は発行日から30日間とされており、その間に保証申込み(信用保証委託申込書の申込日)が行われなければならない。万一有効期限が経過してしまうと認定書は失効となり、再交付を受ける必要が生じるので、認定後はできる限り速やかに保証申込すべきである。

都道府県制度融資や市区町村制度での利用とはどのようなことか

経営安定関連保証(セーフティネット保証)を地方自治体の制度融資で利用することは可能か。

可能である。制度融資については各制度の実施機関である地方自治体ごとに制度要綱や保証条件、保証申込手続等が定められており、それに則した保証申込みを行う。

地方自治体ごとの制度要綱に則る経営安定関連保証は中小企業信用保険法に規定された保険特例であるが、各地方自治体においてもこうした保険特例を利用(併用)した制度融資が設けられている。各自治体制度融資は政策的な見地から、保証期間や貸付利率、返済方法などで一般保証に比べて優遇措置が設けられているのが一般的であるが、そのメニューについては各自治体により様々である。経営安定関連保証に準拠した制度融資についても、ほとんどの地方自治体で用意されている。

基本的には保証申込手続面において、経営安定関連保証を申し込む場合と大きく異なるところはないが、その内容については経営安定関連保証制度の要綱に定める要件め範囲内で各自治体ごとに取り決められており、保証期間や保証料率、貸付利率や必要書類など、制度融資固有の条件が定められている場合があるので、申込みにおいては経営安定関連保証の要件とは別に、各地方自治体の制度融資要件を確認する必要がある。