記事一覧

金融機関の回収に手落ちのあったとき

信用保証協会保証付融資先で、破綻し事故報告書を提出している先があった。実務上は原則として保証付債権よりプロパー債権を優先的に預金相殺することは認められているので、まずプロパー債権と預金の相殺をした。残っているのは保証付融資だけであったので、相殺後の預金残高は債務者に払出した。問題はないだろうか。

延滞または事故報告書提出事由が生じているときは、金融機関は信用保証協会保証付債権とプロパー債権について同等に取立する義務を負っている。預金相殺はその例外であるものの、プロパー債権回収後は保証付債権の取立義務を引き続き負担することとなるため、故意・重過失による取立不能(約定書例11条3号)として保証免責となる。

保全・回収は信用保証協会保証付もプロパーも同じスタンスで約定書例11条3号は、約定書に基づいて金融機関に課された保全取立義務の実効性を確保するため、民法に規定する担保保存義務違反(504条)や、催告・検索の懈怠(455条)による保証責任の免脱を拡張したものである。故意・重過失による取立不能での免責を防ぐためのポイントは、信用保証協会保証付融資とプロパー融資を別々に考えるのではなく、保証付融資についてもプロパー融資と全く同じスタンスで保全・回収にあたることである。

上記の場合も、プロパー融資であれば債権が残っているのに預金を払出すようなことはしないはずである。保証付融資をプロパー融資と切り離すからこそ、対応を間違うのである。金融機関の故意・重過失による取立不能となりうる事例としては、預金相殺の場合の他に次のようなものが考えられる。

①破産、民事再生、会社更生等の法的整理となったときに、債権届出期日までに債権を届出なかった場合

②条件担保である場合、他の債権者が競売申立をしたときに、債権届出をしなかった揚合

債務者の信用悪化を協会に報告しなかったとき

信用保証協会保証付融資のみの利用先の業況が相当悪化していたが、返済については1週間程度の遅れがしばしば見られたものの、3ヵ月以上の延滞には至ることはなかったので、協会には特に報告していなかった。代弁請求の際に、そのことを理由に免責となる心配はないだろうか。

報告漏れだけの理由で代弁拒否されることは(保全措置不十分で実際の損害が生じなければ)、通常はないものと考えられる。

報告は臨機応変に対処
「金融機開は、常に被保証債権の保全に必要な注意をなし、債務履行を困難とする事実を予見し、または認知したときは、遅滞なく保証協会に通知し、かつ、適切な措置を講ずるものとする」(約定書例9条1項)という、保全義務・報告義務が金融機関に課せられており、その違反は保証免責事由となる(約定書例11条3号)。ここで求められる報告は、事故報告書による報告である。

事故報告書提出の実務としては「返済遅延」という形式的な事態にとらわれることなく、回収困難が予見されるような事態については多少幅広く報告義務があると考え、対処すべきである。すなわち、自動的・定形的に報告するというものではなく、臨機応変に対処することである。報告が必要と思われる場合の協会への第一報は、協会担当者への電話で十分であり、その結果、事故報告書の提出を求められれば作成して提出することになる。上記では事故報告書提出事由が生ずる前の状態であることから、報告しなかったことがただちに免責に結びつくことはないが、前述の保全義務に違反し、求償権の回収に支障が生じた場合は免責となる。

ページ移動